里川フライフィッシング

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ゆったりとフラットな流れにラインを置く。
流れがゆっくりとラインを解いていくのを見つめる。
水面が小さく弾けた。
乗らないのは何故かと考える。
あれやこれやと自問自答を繰り返す。
駆け引きに没頭していく。

魚が大きかろうが小さかろうが。
車を長距離走らせて入り込んだ冒険の山岳渓流だろが近所の里川だろうが。
渋い時の最初の一尾には価値がある。

その一尾を流れに戻して立ち上がる。
空を見上げてハッとなる。
目覚めたように、周りの世界が自分の世界に飛び込んできた。

ジョギングやサイクリングする人が通り過ぎていく。

トンビが空高くを旋回している。

背の高い夏草の青臭さ。

畑仕事の老人がゆっくりと歩いていくのが見える。

白鷺がブロックの上からジッとチャンスを伺っている。

郵便配達のカブや宅急便のトラックが止まっては去って行く。

通りすがりの親子が川を覗き込む。

波打ちながら蛇が川を渡っていく。

すすきの穂が風に揺れる。

フォルスキャストしたフライにトンボがしがみつく。

鴨が列をなして泳ぐと、オイカワの群れが大移動してくる。

民家に温かい灯りがともり始める。

流れてくる野焼きの煙に混じって夕食の支度の匂い。

群青色の空に浮かんだ黒い山の向こうに、群れをなした鳥が飛んでいく。

僕も帰ろう。

人の生活を傍に感じながらも、多様な生物の集う場所。

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